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お役立ちコラム

2019/03/19

自家消費と環境価値

 

以前、コラム「最近話題の“環境価値”とは?」にて環境価値について触れた。

 

今回は「環境価値がどのように生み出されるのか」「どのように使用されているのか」といったところを切り取ってみたい。

 

ここで大切なことは、環境価値は「自家消費に使用されたエネルギーについて発行することができる」ということだ。

 

FIT制度で売ってしまった電気については、発電事業者が環境価値を創出することはできず、非化石価値市場で売買されることになる。発電事業者と関係ないところで価値を付与されて、誰かが利益を得ている、と言ってしまうのはうがちすぎか。

 

さて、現行の制度で自家消費している電力について、環境価値を創出できる制度は以下の二つになる。

 

J-クレジット制度

CO2の重量単位に換算して創出できる。創出する際には、あらかじめ「プロジェクト」として登録しておく必要がある。設置してから2年以内であれば、遡ってプロジェクト登録することも可能だ。

 

削減系(省エネに対して創出できるもの)と吸収系(森林管理に対して創出できるもの)があり、それぞれ単価が違う。吸収系のほうが単価は高価である。

 

クレジット創出期間は最大8年間に設定されている。自家消費した再生可能エネルギーに対して、時限付きの成果型補助金(8年間に自家消費した電力量に対しての対価)、と言い方もできる。

グリーン電力証書

自家消費した電力量に対して創出できる。年間一定量の取引が見込めるかどうかなどの審査がある。グリーン電力発行事業者として年度ごとに登録する必要があり、登録料が必要だ。

 

筆者が調べてみたところ、J-クレジットと同じように、あらかじめ創出者と消費者が決まっているものが、事業として成立しているようだ。

 

言い方を変えると、消費者のアテがないのに発行事業者として登録、グリーン電力証書を創出したとしても、買い手を見つけることができなければ年間登録料の回収すら難しくなってしまう。

事業としての環境価値

いずれの環境価値も、発行事業者(創出の支援や売買を行うことができる事業者)となるためには、付帯条件のクリヤ、審査や登録料が必要など、新規事業参入にはややハードルが高く感じられる。また、公表されている資料を見る限りでは、参入初年度に事業譲渡したり、翌年以降は登録していないなどのケースがみられる。事業の継続には、経営層に相応の覚悟が必要かもしれない。

 

これらの環境価値に共通して言えることは以下の通りだ。

社会での認知度は低く、メリットが理解されにくいところがある。

 

購入者(消費者)を見つけるのが難しい。

 

社会に出た環境価値は、カーボンオフセットに活用される。

 

■ 環境価値を創出すると、創出した側は環境価値を失う

自家消費した電力量は、普通に電力会社から買った電力と同じ扱いとなり、環境への貢献、といったメリットを謳えなくなってしまう。

 

■ 創出した環境価値は、必ず売買しなければならない。

環境価値を創出だけ行って、自社で保有して利用する、ということは許されない。

 

■ 環境価値を購入した側は、必ず消費しなければならない。

転売することはできず、消費=無効処理または認証を行わなければならない。

 

■ 環境価値を消費することで、CO2削減に貢献した、とみなされる。

環境価値を消費してカーボンオフセットすることで、企業のCO2排出量を削減した、とみなされる。

 

■ 環境価値の創出→消費のサイクルを回していくことで、購入者には、自社に設備がなくとも環境貢献することができ、創出者はエネルギーコストを削減したうえで、資金を得ることができる。

 

これからの環境価値は、ブロックチェーン技術を応用することでトレーサビリティを持つようになる。

 

環境価値のうち「非化石価値」については、政府主導で専用の市場が開かれている。まだまだ課題が残る状態ではあるようだが、「RE100」に参画し国際的にもアピールする動きも進んでいる。

 

環境価値は、徐々に認知度も上がってきており、ニュースになる機会も増えてきているように思われる。今後も、本項やニュースなどで、情報提供を行っていく予定だ。

 


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