太陽光発電の導入時に活用できる節税・税金対策・税制優遇
企業で太陽光発電を導入することで、電気料金の削減やCO2削減効果による企業価値向上など多くのメリットがある一方で、高額な設備投資が必要です。そのため、太陽光発電設備の取得や維持にかかる費用は経費として計上するなど、節税対策をしっかりしておくことが重要です。
また、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、国が太陽光発電の導入を後押ししていることもあり、太陽光発電を導入する場合には、さまざまな税制優遇を受けられるケースがあります。
制度をうまく活用することで、お得に太陽光発電設備を導入するとよいでしょう。
企業が導入する太陽光発電設備には、大きく「自家消費型太陽光発電」と「全量売電型太陽光発電」の2つがあり、それぞれ節税方法や優遇される内容が異なるため、どのような対策が適用できるか事前に確認することをお勧めいたします。
(最終更新日:2024/03/25)
太陽光発電にかかる税金
企業が導入される太陽光発電に関係する税金には、「法人税」 「固定資産税」 「償却資産税」 などがあります。
「自家消費型太陽光発電」と「全量売電型太陽光発電」でかかる税金の違いを確認しておくとよいでしょう。
法人税 |
法人税とは、法人の事業活動で得た所得にかかる税金のことです。 全量売電型太陽光発電は、売電収入が事業所得に該当するため、法人税での支払いが必要です。 |
---|---|
固定資産税 |
固定資産税は、土地・家屋・償却資産に対して毎年かかる地方税で、自家消費型でも全量売電型でも10kW以上の太陽光発電設備はすべて事業用の資産となり課税対象です。 太陽光発電設備を設置するために土地を購入する場合、土地にかかる固定資産税の支払いも必要となります。 |
償却資産税 | 償却資産税とは、固定資産税の一種で、法人や個人事業主が所有する償却資産にかかる税金で、自家消費型でも全量売電型でも発電設備の規模にかかわらず償却資産としての申告が必要です。 |
太陽光発電の導入で使える優遇措置・節税対策
主な節税対策としては、「太陽光発電設備の費用を経費として計上する」方法と「税制優遇制度を利用する」方法があります。
「自家消費型太陽光発電」と「全量売電型太陽光発電」では、優遇措置内容や節税対策が異なるため、どの対策が適用できるか事前に確認しておくとよいでしょう。
企業が太陽光発電設備を導入する場合、主に「自家消費型太陽光発電」と「全量売電型太陽光発電」の2種類があります。
「自家消費型」は発電した電力を自社内で使用する電気として消費する太陽光発電のことで、電気代の削減やCO2削減を目的としています。
「全量売電型」は発電した電力をすべて電力会社に売電する太陽光発電のことで、主に投資目的として導入されています。
① 費用の経費計上による節税対策
設備投資額と維持管理費を経費として計上 自家消費型 全量売電型
太陽光発電は償却資産として計上されるため、設備を導入する際にかかった費用は減価償却費として計上することができます。また、設備のメンテナンスや修理などの維持管理費用も経費として計上できるため、中長期にわたって節税の効果が期待できます。
全量売電型の法定耐用年数は17年ですが、自家消費型は施設の用途によって法定耐用年数が異なるため注意が必要です。例えば、宿泊業用設備は10年、倉庫業用設備は12年といったように「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められており、自家消費型は全量売電型に比べて耐用年数が短い傾向にあります。
② 税制優遇制度を利用した節税対策(設備投資減税)
中小企業経営強化税制 自家消費型
対象税目 | 法人税 |
---|---|
適用期間 | 2025年3月31日まで(令和6年度末まで) |
概要 | 設備投資をして生産性を高めたい中小企業者が経営力を向上させる特定設備を新たに導入した場合、法人税について「即時償却」もしくは「取得価格の最大10%の税額控除」のいずれかの適用を認める措置 |
対象事業者 |
・資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人 ・資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人 ・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人 ・協同組合等 |
対象となる太陽光発電 |
・自家消費型太陽光発電 ・余剰売電型太陽光発電(自家消費率50%以上) |
税制措置 | いずれかを選択 ・即時償却:設備費用の全額を初年度に一括償却 ・税額控除:設備費用の税額を7~10%控除(資本金3,000万円以下の法人は10%控除、1億円以下の法人は7%控除) |
注意点 | 経営力向上計画の認定が必要 |
中小企業投資促進税制 自家消費型
対象税目 | 法人税 |
---|---|
適用期間 | 2025年3月31日まで(令和6年度末まで) |
概要 | 中小企業における生産性向上等を図るため、一定の設備投資を 行った場合に、「特別償却30%」もしくは「税額控除7%」のいずれかの適用を認める措置 |
対象事業者 |
・中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等) ・従業員数1,000人以下の個人事業主 |
対象となる太陽光発電 |
・自家消費型太陽光発電 ・余剰売電型太陽光発電(自家消費率の制限なし) |
税制措置 | いずれかを選択 ・特別償却30% ・税額控除7%(資本金3,000万円以上の法人は特別償却のみ) |
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 自家消費型
対象税目 | 法人税 |
---|---|
適用期間 | 2024年3月31日まで(令和5年度末まで) |
概要 | 2050年カーボンニュートラルを達成するため、一定要件を満たす省エネ・脱炭素化に資する最新設備の導入投資について税額控除または特別償却できる措置。 適用するには、事業適応計画を作成し、認定を受ける必要あり。 |
対象企業 | 大企業・中小企業者 |
対象設備 | 認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画に基づき導入する設備(上限500億円) ①大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備(自家消費型太陽光発電※自社所有の場合に限る) ②生産工程等の脱炭素化と付加価値向上 |
税制措置 | ①大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備:特別償却50%もしくは税額控除10% ②生産工程等の脱炭素化と付加価値向上:特別償却50%もしくは税額控除5~10% ※いずれも法人税額20%相当額が上限 |
注意点 |
・エネルギー利⽤環境負荷低減の認定が必要 ・カーボンニュートラル投資促進税制は会社が保有する資産が対象となるため、第三者所有(PPAモデル)の自家消費型太陽光発電は対象外 |
固定資産税の特例措置(再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置) 自家消費型
対象税目 | 固定資産税(地方税) |
---|---|
適用期間 | 2024年3月31日まで(令和5年度末まで) |
概要 | 再生可能エネルギー発電設備に対して、取得から3年間、償却資産税(固定資産税)を軽減する措置 |
対象企業 | 法人・個人事業主(再エネ発電設備を取得した事業者) |
対象設備 | 太陽光発電設備 ※FIT・FIP制度の認定を受けたものは対象外 ※自家消費型補助金の交付を受け取得した設備(令和3年度以降はソーラーカーポートの導入を行う事業が該当) |
措置内容 | 再生可能エネルギー発電設備について、新たに固定資産税が課せられることになった年度から3年度分の固定資産税に限り、課税標準を、課税標準となるべき価格から以下の割合に軽減。 ・1,000kW以上:3/4 ・1,000kW未満:2/3 |
消費税還付制度 全量売電型
全量売電型太陽光発電では消費税還付制度を利用でき、設備の導入費用にかかる消費税から、売電収入の消費税を差し引いた額を還付してもらえます。
例えば、3,000万円の全量売電型太陽光発電設備を導入した際に発生する消費税は300万円です。
年間の売電収入を200万円と仮定した場合、売電収入にかかる消費税は20万円です。本来であれば設備導入時に発生した消費税300万円から売電収入の消費税20万円を差し引いた280万円を消費税として納付しなければなりませんが、消費税還付制度を利用することで、280万円全額を還付できます。
消費税還付を受ける条件 |
・全量売電型太陽光発電設備であること ・課税事業者であること ・免税事業者は課税事業者の要件を満たすこと |
---|---|
注意点 |
・消費税還付を受けられるのは事業初年度分のみ ・自家消費型太陽光発電は対象外 |