自家消費型太陽光発電は中小企業こそ導入すべき?導入のメリット
昨今「自家消費型太陽光発電」が、企業が太陽光発電設備を導入する際、検討の対象としてクローズアップされるようになってきました。これまで主流だった固定買取価格制度(FIT制度)が、再エネ賦課金の上昇という形で国民に負担をさせる制度として限界に達しつつあり、その影響で太陽光発電における全量売電のメリットの低下が続いているためです。
自家消費型太陽光発電を税制上の優遇措置などを踏まえて検討を始めている企業は多いと思いますが、中小企業にとってはどの程度のメリットになるのかを知りたい、とお考えの経営者の方も多いでしょう。
そこでこのコラムではそんな疑問に答えるため、自家消費型太陽光発電の基本的知識やメリットなどを解説していきます。
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自家消費型太陽光発電とは?
自家消費型太陽光発電とは、その名称が示す通り、設置したソーラーパネルで発電した電気を、売電せずに自社や自宅で使うシステムです。現在、自家消費型の太陽光発電設備が注目されているのは以下のような理由があります。
エネルギー資源に乏しい日本は、再生可能エネルギーの普及政策として、太陽光で発電した電力を電力会社が固定価格で買い取るという制度を2009年に始めました。これはFIT制度(固定価格買取制度)と呼ばれています。2012年には、1kWhあたりの買取料金を40円+税で設定したため、利の大きい設備投資として普及していきました。
しかし太陽光による電力の買取料金は年々低下している上、2012年の時点で固定買取制度は、導入から20年で固定買取を終了と決められています。そのため、2032年問題がささやかれる今、FIT制度に代わるメリットが求められています。そこでクローズアップされているのが自家消費型太陽光発電です。
2012年は1kw/hあたり40円+税で買い取られていた電力が、2019年には14円+税まで下落しており(10kW以上500kW未満の場合)、逆に電気代は高騰を続けていますから、作った電気を売るよりも、自家消費した方が経済的メリットを多く得られる時代になったのです。
中小企業が自家消費型太陽光発電を導入するメリット
ここからは中小企業が自家消費型発電システムを導入するメリットを挙げていきましょう。
電気代の高騰を見据えたコストカットが可能
太陽光で発電した電力を自家消費すれば、電力会社に支払う電気料金を削減できます。これはコストカットにより純利益を創出したことになりますから、企業にとっては大きなメリットがあります。
具体的な数値で例をあげましょう。自家消費型の設備を導入したことで、いままで支払っていた毎月の電気料金が20万円削減できたとします。
この企業の純利益率が3%だったとすると、上記の20万円を営業利益で上げる場合、600万円の仕事を受注し、とどこおりなく業務を遂行したことに匹敵します。中小企業にとって毎月600万円の売り上げを増やし、平均的な利益を上げ続けるのは非常に大変なことなのではないでしょうか。月600万円という事は年間で7,200万円の売り上げ増に値するということです。
営業活動や管理コストをほとんど伴わずに、純利益20万円のアップが毎月、しかも何十年にもわたって続くというのは小さい話ではありません。
※この20万円という金額はあくまでも一例です。実際に削減できる電気料金の予想シミュレーションは、信頼できる太陽光発電設備の専門家に相談してください。
蓄電池があれば災害時の緊急電力供給源としての利用ができる
自家消費型太陽光発電設備は蓄電池と併用することで、災害による停電発生時に非常用電源として使用できます。電力が停止した状態が続けば、業務のほとんどはストップしてしまいますし、大切な商品や材料の保管が不可能になります。
ただし自立運転には電力的限度があるため、全ての設備を稼働して通常運転を行うことは難しいでしょう。しかしダメージを最小限に食い止める、必要最低限のライフラインは確保できるという意味で、自家消費型太陽光発電は災害時に大きな意味を持っています。
RE100をはじめとするCSR活動でビジネスチャンスを広げることができる
現在、事業で使用するエネルギーの100%自然エネルギー化を目指す「RE100」をはじめとして、さまざまなCSR活動が展開されています(CSRとは自社利益だけでなく社会に与える影響を踏まえた意思決定をすることです)。
その中において、太陽光発電を自家消費型で使用して温暖化防止に貢献することは、環境への配慮に重きを置く現在の国際社会の潮流に合致しています。
また、副産物として同様の動きをする会社とのコネクションができたり、大きな会社から仕事を受注できたりするチャンスも広がるかもしれません。
RE100については、以下のコラムでも言及しています。併せてご覧ください。
中小企業かつ売電目的ではない場合、様々な補助金・税制優遇が受けられる
中小企業であることと、設備導入の目的が売電でない場合、自家消費型太陽光発電はいくつかの補助金や税制優遇措置が受けられます。これについては次の項目で詳しく説明しましょう。
中小企業が自家消費型太陽光発電を導入することで得られる補助金・税制優遇
この項目では自家消費型太陽光発電を導入することで受けられる補助金や税制優遇制度を紹介していきます。(なお、ここで紹介しているのは平成30年度(2018年度)実施分となっています)
中小企業が自家消費型太陽光発電を導入することで得られる補助金・税制優遇
・「再生可能エネルギー電気・熱自立的普及及促進事業」
環境省が行っている補助金の制度で、太陽光を含む再生可能エネルギー発電設備を導入することや、付帯設備としての蓄電池の導入の際の費用を対象に1/2までが補助されます。
・「地産地消型 再生可能エネルギー導入拡大事業」
東京都地球温暖化防止活動推進センターの事業で、中小企業であれば5,000万円を上限として、補助対象費用の1/3を受けることができます。(なお、下記は平成30年度のパンフレットですが、東京都地球温暖化防止活動推進センターのHPにて31年度も継続していることが明確になっています)
https://www.tokyo-co2down.jp/cmsup/pdf/chisan_leafret_03.pdf
中小企業等経営強化法「固定資産税の特例措置」は、2019年3月で終わりました。
現行の固定資産税の特例は、生産性向上特別措置法」の「先端設備等導入計画」による軽減になります。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/seisansei/2018/180330seisanseiPRgaiyou.pdf