EPC業者インタビュー:株式会社Looop「売電」から「自家消費」の時代へ(後編)
株式会社Looop 自家消費営業部 営業課 課長 藤原啓介様
前回の記事で企業としての強みをお伺いしましたが、自家消費においての他社との差別化はいかがでしょうか?
今まで売電であれば、パネルを置けるだけ置いて発電したら売ればよいというのが基本的な考えだったと思います。ですが自家消費に関しては需要家さんが使う部分だけ発電すればいいのです。発電しすぎてしまうと過剰投資になってしまって、逆に利回りを圧迫したり経済性が悪くなってしまう。ですから自家消費に関しては、需要と供給どちらも知識・ノウハウとして持っていなければいけないと思っています。
その点に関しては、我々Looopでんきでは需給予測をしており人様がどれぐらい電気を使うのかというのが手に取るようにわかります。需要に合わせて太陽光発電の設置を行えますので、自家消費に関してはその点が他の EPC の企業様に比べ非常に強いと感じています。
昨年発売された「MY自家消費セット」ですが、パッケージ化した反響は?
非常にあります。MY自家消費セット、そしてそのウェブサイトもシンプルにしたので分かりやすいという声を非常に多く頂いています。エネルギーの業界は難しいので、できるだけシンプルにしたいと。パネルだけあればできるのか、人様が使える電気になるかというとそういう訳ではなくて、パワコンやケーブルも必要で、お客様は結局それらがないと目的が達成できない。という訳でパッケージ化し、わかりやすい形にして提供しています。
「MY自家消費セット」のお客様は中小企業が中心でしょうか?
当初は我々もそう考えていましたが、実際お客様は大企業とか環境への配慮を理念に掲げている企業、そして特にいまRE 100、ESG投資、SDGs関連のお客様が多いですね。やはり「MY自家消費セット」を営業していくなかで、RE100や再エネ比率を上げたいという企業が非常に多いです。需要と供給の差も関係しますが、太陽光だけですと昼間の電気しか賄えないので、RE100というのは難しく、不足分はどこかから買わなければいけない電気が必ず出てきます。
例えば電力会社さんから再エネ100%電源の不足分の電力を買いたいといっても、価格が高く結構難しいです。我々Looopは再エネの電気も供給しています。バイオマスの発電所や水力から電気を買っているので、先ほどの「買う必要がある電気」に再エネを充当することで、お客様をRE100へ加盟できるようにします。また、非化石証書やJクレジットを出すこともできるので、そこは非常に強みだと感じています。
RE100をやはり企業様は意識されているのですね。逆に現状自家消費で課題はあったりしますか?
取り急ぎの課題は、啓蒙活動かなと。なぜかと言うと、屋根や遊休地に太陽光を取り付け自家消費する場合でも、お客様は売電のイメージしかない方が多く、目先の情報をもとにイメージを膨らませがちだからです。
確かに売電価格やその価値としてはだいぶ下がってきています。同じ1 kWhで売れば価値は少ないですが、自分でいま使っている電気がいくらか考えてみます。高圧のお客様は、中電さん管内だと従量料金が15円+再エネ賦課金が加わり18円ぐらいで電気を買っていると思います。住宅のお客様は、もっと高くて全て込みでおそらく35円ぐらいで買っていますね。ですから、同じ1kwhなのに売れば来年は15円、使っているのは住宅用で35円と3倍も価値が違います。
なおかつそこに環境価値も含まれているので、そういったところをきちんとお客様に理解していただきたい、そして売電としてはネガティブですが国として環境省やエネ庁は自家消費でのCO2の削減を推進しているので、そういったところを我々が理解しお客様にきちんと道筋を示していかないといけない。ですから啓蒙活動が重要だと考えています。
自家消費も含め、今後の事業の展望を教えてください。
まずは再エネの発電設備を増やすのが第一だと思っています。弊社としては再エネの普及が第一で、では再エネをどうしたら増やせるかというと発電設備、原資が必要です。ですが、経産省のFIT認定を受けたものは再エネの「価値」はないんです。結局我々の税金のような形で再エネ賦課金から取られているので。素の再エネの価値がある太陽光発電設備は産業用だとほとんどないと思います。ですからNON FITの発電所での再エネを我々がお客様に供給していかないといけないと思っています。
その再エネの電気を欲しいという方は多くいるはずです。そしてRE100の企業を筆頭にこれからもっと増えていくはずで、RE100を掲げている企業は、おそらく日本の電力需要の数パーセントを占めている方々だと思います。では我々がその分の電力を供給できるかと言われると現状絶対に無理です。ですが頑張って発電所を増やすことで、供給できるようにしていくことが使命だと思いますし、あとはお客様にメリットがでるように価格設定をしていくことが今後の展望であり、我々が向かっていく方向だと思っています。