メーカーインタビュー:ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社 独自技術と経験をもとに「持続可能な社会」を実現する集団
ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社 代表取締役社長 伊藤敦様
事業内容について教えてください。
弊社事業のメインは太陽光発電のメーカーとしての仕事です。
モジュール、パワコン、そして最近では蓄電池の製造販売をしています。
次に特別高圧の太陽光発電の架台部分の製造販売や建設工事です。
主に数十メガクラスの規模の案件が中心となります。現在この2つが大きな事業の柱となっています。
御社はパネルのリユースやリサイクル事業も行っていますよね。
そうですね。FIT以降、新品のパネルが相当世に出ましたから、市場はこれから大きくなります。十数年後には、寿命を迎えたパネルを使用した案件が相当量でてきます。ですから今はリユース・リサイクルの事業はまだ準備段階ですね。長い期間準備が必要なので、我々は2005年から準備をしてきています。
ただパネル単体のリユース・リサイクルの事業というよりは、我々は分析の技術やデータをもとにビジネスを組み上げる、ということを目指してこの事業に取り組んでいます。例えば、現在太陽光発電ではO&M(Operation&Maintenance:管理と保守)として定期検査などを実施しますが、必要以上な点検や草刈りなどのメンテナンスなどは不要になると思っています。その発電の特性を日々掴み、しっかりと管理することで異常や不具合が起きた時に点検を実施すればいい。そうすることでO&Mの費用を大幅に減らすことができます。
ただし、それにはデータを取得・分析し、原因を特定しアウトプットすることが必要です。パネルの不具合や検査をしてきたデータを蓄積している、というのは我々の強みです。ですから、その分析結果やデータを活用して事業を創り上げていこうとしていますし、またそこが大事な視点ではないかと思います。
伊藤社長は講演にも多く登壇されていますが、セミナーなどに出席される方の環境意識は最近いかがでしょうか。
ガラっと変わりましたね。CO2削減、RE100、再生可能エネルギーの活用といったところの意識というのは大きく変わってきています。
その背景には2つありまして、一つ目にパリ協定があります。新規で石炭火力が建設が出来ない状況になったり、商社が石炭事業から撤退したりと環境が変わりだしています。
二つ目は再エネのコストが下がったことです。従来は再エネの活用=コストアップという状況だったのが、再エネでコストダウンというのが今では当たり前になってきていますし、加えてグリーン電力も使ったりします。国内ではRE100も10社を越えましたしRE100というのも珍しくないぐらいになってきました。
「グリーナでんき」ではRE100を目指す企業向けにプランを提供されていますね。そのグリーナでんきの魅力は?
我々はその環境価値にグリーン電力証書を活用しています。非化石証書に関しては、活用する方法がないわけではないのですが、電源がどこの電源かわからないのです。ここが非化石証書の致命的なところです。
反対にグリーン電力証書は厳格です。まず発電所を認定しますが、FITで売電をしているところではいけません。FITでない発電所を設備認定し電力量を認証します。この認証を行い、番号が付きますのでそれを売るというわけです。ですからとても厳格な取り扱いをされていて、我々はそういったしっかりとした仕組みを活用した環境価値でRE100のビジネスをしていますので、そこの評価は高いと思います。
例えば、グリーン電力証書は実際にASKUL様に納めました。RE100は基本的に電源を特定しなければならないのですが、グリーン電力証書の場合は認定を受けているので、5月分の電源はどこの電源か、と明示できます。そういった電源を特定できるといったところが他の環境価値とは全く違うところです。
グリーン電力証書を発行した企業としては、我々は国内では2番目の発行業者です。1番は東電、関電、主要電力会社が共同でつくった日本自然エネルギー株式会社ですが、そちらは特定の同じ仕組みでやらなければいけないので、「グリーン電力証書を活用したRE100プラン」というのは、我々ネクストエナジーしかできないのです。
そして最近では「自家消費」も注目されていますね。そのなかで各企業が導入を検討するにあたり懸念されるのはどういったことでしょうか。
連系制限はもう何年も前からで、東京電力管内では北関東や千葉県など連系制限されてしまい、連系までに相当の時間が掛かってしまったり、高額な負担金がでたりしています。それは九州や四国でも同様です。しかし工場や倉庫などでは電力の需要はあり、自家消費太陽光発電が急激に進み出しています。
懸念事項としては、やはり採算性のところではないでしょうか。採算が取れないのであれば、導入は検討できないでしょうから。そこはきちんと我々も電力の使用状況をいたただいて、シミュレーションを使ってご提案をしています。あとは構造的な問題です。構造のプロに検証してもらう必要があるのですが、ここは低価格で構造検証ができるような体制を取っています。また構造を心配されるお客様には、若干料金はいただいていますが、安心していただけるようきちんと検討書面をお出ししています。
確かに自家消費は売電に比べてシミュレーションもより複雑になりますよね。
現状、実際シュミレーション通りになるかどうかは業者によって差があるのではないでしょうか。工場では休みの日や年末年始など電力を使用しない期間があったり、逆に冷蔵庫・冷凍庫があるような工場とか倉庫になってくると365日ずっとデマンドが一定になります。業種によって逆潮防止装置を付けたほうが良かったり、場合によってはパワコンをうまく制御させなければいけない場合もあります。
ただ、弊社は今までのさまざまな取り組みによって得られた技術やノウハウを蓄積しています。パワコンの出力を抑えて逆潮流がでないようにする、要はRPRも作動させないようにするといったシステムを4月にリリースする予定で、そういったところが弊社の進んでいるところでもあります。自家消費太陽光ではパワコンの出力を調整する機器の開発、それを動かすシステム、また精度のよいシミュレーションを提供できるようにと思っています。
御社は海外でも完全自家消費で受注されていますが、やはり今後は海外にも積極的に事業展開していく見通しでしょうか。
我々ももちろん海外で事業展開していきますが、展開のやり方は少し考えていかないといけないと思っています。エンジニアリング能力や技術力を武器にやっていくということだけでは難しいと思います。
例えば付加価値の高い蓄電池を供給しながら展開していくとか。フィリピンは別として、結局東南アジアでは電力が自由化されていない国が多いので、そういった国では系統とよくなじませてやる必要があります。今、蓄電池の価格はかなり落ちてきましたから、蓄電池を絡めて他社にはマネできないやり方で展開していくことも考えていまして、そういったところで価値を最大化した上で展開していくことが今後必要になってくると思っています。