太陽光発電の事務手続きと規制
太陽光発電事業を開始しようとすると事務手続きはなかなかのハードルになる。
今回は事前手続きと太陽光発電設備にまつわる規制などの表面にさらっと触れてみる。
まず、連系させてもらえるのか
太陽光発電設備を建設し、いざ売電しようとしても、電力側(系統側)に「空き」がなければ、買ってもらうことはおろか、系統に接続(系統連系)すらさせてもらえない。なので、実際に建設する前に事前相談や有料の接続検討を行い、まず、電力会社との接続契約を締結しなければならない。
2018年8月の見直しでFIT制度の申請において、以前は申請後に提出が可能だったこの「接続同意書類」を、申請時に提出することが必須になった。接続同意を得られたら、3年以内に連系しなければならない。
すでに各電力会社とも、「出力制御に同意」しなければ連系させてもらえない。連系しても、系統側の都合で「発電を停止することがある」ことに同意しなければならない。
では、手続きは完了している?
前記の通り、申請後に提出可能だった時には、時間がかかる「接続検討・同意」が後回しにされ、完工しても「接続同意」の手続きができていないために連系できなった、という話は、この業界では以前はよく聞いた話だ。特に高圧の場合は、申請段階から竣工に至るまで、企業の決算期をまたいで1年以上かかる、ということは普通にある。当然、買取価格は申請された時点の金額だ。高額だった申請時の価格ではなく、安くなっている現時点のFIT価格で買い取ってもらうよりほかない。減価償却や利回りも全く変わってしまい、物件の売買契約と、実際に出来上がったモノでは仕様が違っていた、ということになってしまう。こういった案件では契約は契約をたがえたとして破棄されたり、損害賠償の裁判になってしまうこともある。
この原因は申請を行う業者の怠慢以外、なにものでもない。
このようなことを防ぐために、制度が後追いで整備されたのだ。
太陽光発電を取り締まる法律とは
太陽光発電設備のFIT制度では、開始当初、世界的に基準で見ても非常に高いkw単価で買取りされていた。
2011年当時、太陽光発電設備の普及のために、経済産業省 原子力安全・保安院から太陽電池発電設備の保安規制の緩和が行われている。これが「太陽光バブル」などと言われ、国内に太陽光発電設備が一気に広まるきっかけとなった。ここまでは行政の目論見通りだった。ただ、太陽光発電設備の設置にあたっては、さまざまな法律と、自治体や省庁に確認や折衝が必要になる。この部分に関しての枠組みが整っていないまま、「悪人はいないだろう」という性善説を信じて制度がスタートしてしまっているようだ。
今のところ(2018年10月現在)、太陽光発電設備を直接、管理規制する法律は存在していない。では、どういった根拠であまたの太陽光発電設備は設置されているのか。
土地においては森林法や国土交通法、設備自体は電気事業法、構造はJISや電気設備技術基準、連系については系統連系規定、撤去後は建築基準法、廃棄物処理法・・とため息がでるほど続く。
管轄する省庁も複数にわたる。FIT制度は経済産業省主導で、土地、開発関係は国土交通省、環境省。発電が終了すると太陽光発電設備は建築物として建設省に関わるものになってしまう。
一般社団法人 太陽光発電協会が公表する設備設計のガイドラインや事業者評価制度は、こういった法律上の問題を未然に防ぐために作成されている。
このガイドラインは法律ではないので、公表即対応が原則である。法令ではないので強制力はないのだが、根拠となる法律までさかのぼり、法律に規定された罰則が適用される。このガイドラインは、法令のように発布・施行まで半年猶予があるものではない。しかし公表までに必ずパブリックコメントの公募が行われ、広く一般の意見を吸い上げる仕組みはできている。
早い段階で情報を入手し、手続き方法、設計などにできるだけ早く反映しておくことが非常に大切だ。
参考:
“太陽電池発電設備の保安規制の緩和”. 一社)日本内燃力発電設備協会. https://www.nega.or.jp/publication/press/2011/pdf/2011_07_5.pdf, (参照2018-10-04)
“FIT 制度に係る標準処理期間及び運用ルールの一部見直しについて”. 資源エネルギー庁. http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/announce/20180831_1.pdf, (参照2018-10-04)
“「太陽光発電事業の評価ガイド」について”. 一社)太陽光発電協会. http://www.jpea.gr.jp/topics/hyouka_guide.html, (参照2018-10-04)