COLUMN
太陽光発電コラム

2018/10/23

太陽光発電への規制は急に始まったのか?

このところ、太陽光発電に対して、厳しい措置が取られているニュースを目にすることが多い。
なぜいまになって、という印象を持つ方も多いのではないか。
今回は太陽光発電の規制について紐解いてみたい。

太陽光発電への規制は急に始まったのか

太陽光発電が広まったのは、2012年に施行されたFIT制度

太陽光発電が広まったのは、2012年に施行されたFIT制度であることは言うまでもない。
FIT制度を成立させている法律は「再生可能エネルギー特別措置法」であり、この法律に則り、政府が電力の買取価格を決定している。

 

では、そもそも「FIT制度」とはどういう制度なのか。単に電気を売った買った、というものではなく、実体は補助金制度なのである。

 

補助金であるからには、計画があり(買取期間は20年間)、財源があり(電気料金に含まれる再エネ賦課金)事業者は20年間、発電を維持する義務がある。

 

下記、参考書籍* の中では「パフォーマンス型補助金」と呼ばれている。つまり、発電量(パフォーマンス)に応じて支払われる補助金、ということだ。なので、補助金をより多く得ようとすれば、多く発電することを目指さなければならず、多くの再生可能エネルギーが電力系統に流れて消費されると、再エネ賦課金も国民全員からどんどん徴収されていく、という仕組みになる。しかし、再エネ賦課金も青天井ではない。2015年7月に策定された「長期エネルギー需給見通し」では、3兆7000億円から4兆円とみていた。そして2017年の再エネ買取価格は2兆7000億円。すでに想定の67%ほどに達している。

 

さて、ここで最近のニュースを思い出してみよう。2012年から14年にかけての未稼働案件が20GW以上あり、40円/kw、36円/kwという買取単価のままいわゆる「塩漬け」になっている。「塩漬け」とは、高い単価で売電するため、案件を確保する設備認定を取得しておき、市場がこなれて機器の性能UPや機器価格、施工価格の低下を待っている状態のことを指す。着工できない理由は様々あろうが、「設備認定」を取得した業者が、機器や工賃の値下がりを見込んで故意に着工していない案件が少なからず存在し、これらの「未稼働案件」に経産省がメスを入れる、というニュースが流れたのである。

 

単純計算で、36円/kw案件で500kwのものが「塩漬け」になっていたとしたら、2018年の買取価格18円/kwでは、1,000kwの太陽光発電所が建設できる。この「塩漬け」500kwは、系統に接続されるものとして申請されているため、系統側でもいわば予約分を「空けて」待っている、ということにもなる。つまり、後から真剣に太陽光発電に取り組みたい、と思って接続検討を申請しても、「予約」があるから系統連系できません、ということが起こりうる、ということになる。

 

 

2017年4月に改正FIT法が施行

実はこの未稼働「塩漬け」案件は、業界内でも問題視されてはいたが、実際に規制する法律、制度がなく、業界の自浄力に依存していたところがある。2017年4月にFIT法が改正され、従前は「設備認定」であったが、改正FIT法のもとでは「事業申請」とする、「事業計画」の策定や「事業を20年間維持する」という前提で、より厳しく20年間の「発電事業」を行う申請とする、という面を強く打ち出した手続きとなった。不備があれば指導や改善命令、最終的に認定取り消しまで行える、とし、いままで太陽光発電関連に罰則のなかったものが、この改正FIT法の施行で引き締まり、この「事業申請」を、稼働済み案件も含めてすべての案件を申請させた、というのは記憶に新しいところだ。

 

業界の中でもお上がナタをふるった、という印象があり、「塩漬け」が一掃とまではいかずともある程度はなくなるのでは、と期待感もあったのだが、フタを開けてみると「塩漬け」は相変わらずだった。

 

おそらく、短期間に「事業申請」が集中してしまったことが原因の一つでもあろう。渋滞している事業申請への対応も後手後手に回っていた。

 

またこの影響からか、改正FIT法施行後に設計、計画された案件の「事業申請」について、「申請提出から認定までの期間」がFIT法が改正される以前に比べて長くかかるようになっている、ということも事実である。

 

既得権益を引きはがすのは難しい。そんな中で今回、経済産業省が本気でナタをふるう、はずだ。本年度(2018年度)中に送電線接続工事が行われない案件については、着工時の2年前のFIT価格とする、という。だからといって「駆け込み施工」が多発して、施工レベルが低い発電所が大量生産されても意味がない。

 

業界内で生きる我々も、自らを律しつつ、EPC事業、O&M事業、発電事業に取り組まなければならない。あざといマネは自らの首を絞めるだけだ。お天道様に顔向けできないようなことは、この業界では許されない。

 

 

参考:

安田陽. “第1章「発電ビジネスは一にも二にもメンテナンス」”.” 第4章「経営戦略としてのメンテナンス(対談集)」”.  再生可能エネルギーのメンテナンスとリスクマネジメント. 株式会社インプレスRD, 2017