COLUMN
太陽光発電コラム

2021/04/19

FIP制度を利用して賢く売電をするには

FIPとはFIP制度を分かりやすく解説

FIP制度とは

FIPとは「Feed-in Premium(フィード・イン・プレミアム)」の略称で、
FIP 制度とは、再生可能エネルギーの自立普及・完全自由競争に向けて、再エネ発電事業者が、売電する際に市場価格にプレミアム(補助額)を上乗せする制度です。

この制度によって、発電事業者は発電した電気を市場で販売することになり、発電量によって割増金(プレミアム分)を受け取ることができます。
これまでは、固定価格買取制度(FIT制度)によって、手厚く導入が支援されていた再生可能エネルギーの自立化へのステップとして、電力市場への統合を促しながら、同時に投資インセンティブが確保されるよう支援することを目的としています。

日本では、2022年度よりこのFIT制度に加え、市場連動型となるFIP制度が導入されます。
経済産業省では、再生可能エネルギー電源を「競争電源」と「地域活用電源」の2種類に大別しており、大規模太陽光や風力など競争力のある電源への成長が見込まれるものは競争電源としてFIP制度に移行させていく方針です。
再生可能エネルギーの事業性を高め、普及の後押しを目的としたFIP制度は、欧州ではすでに主流となっており、再エネ発電事業者への補助金を削減する効果や、産業の自立が期待されています。

FIT制度とFIP制度の違い

2012年からはじまったFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)では、再生可能エネルギー発電所から作られた電気はすべて電力会社が買い取ります。買取価格は国が毎年定め、家庭用の太陽光発電(10kW未満)は10年間、事業用の太陽光発電は20年間、同じ価格で買い取ってもらえます。

FIT制度では、再エネ発電によってつくられた電気を電力会社が買い取るよう義務付けられていますが、その買取費用の一部は、「再エネ賦課金」として毎月の電気代に加えて電気を使うすべての利用者から徴収されています。
FIT制度により日本の再生可能エネルギーによる発電の普及は拡大してきましたが、「再エネ賦課金」は年々高くなり、国民の負担が大きくなりつつあります。
FIP制度のプレミアム額も国民負担により賄われますが、FIP制度の開始により、入札による競争がさらに進んでコスト低減が促され、国民負担の抑制につながることが期待されます。

FIT制度 再生可能エネルギーの普及を促すことが目的
・発電事業者が発電した電気を、電力会社が一定期間固定価格で買取る
買取価格が一定で、収入はいつ発電しても同じ
再エネ賦課金(国民・企業など電力使用者が負担)
・需要ピーク時に供給量を増やすインセンティブなし
インバランスリスクなし
非化石価値なし
FIP制度 再生可能エネルギーの自立を後押しし完全自由競争にすることが目的
・発電事業者が自ら電力市場に電気を売る
補助額(プレミアム)が一定で、収入は市場価格に連動
・需要ピーク時に蓄電池の活用などで供給量を増やすインセンティブあり
・正確な発電予測と発電計画が必要
インバランスリスク(発電計画と実発電量が異なるとペナルティ)
非化石価値販売可能


FIT制度とFIP制度の違い
再生可能エネルギー固定価格買等ガイドブック2021年度版(出典:経済産業省)|(リンク先)

FIP制度の種類と日本におけるFIP制度

欧州では、すでにFIP制度が導入されているところがあります。
FIP制度には、「プレミアム固定型FIP」「プレミアム固定型FIP(上限・下限付)」「プレミアム変動型FIP」の3種類があり、電力の卸売市場価格に一定の割増金をつけるか、電力の卸売市場価格の変動に応じて割増金が上下するという違いがあります。

欧州では、「プレミアム変動型」が広く採用されており、「プレミアム固定型」は再エネを普及する上でのリスクが大きいとのことから敬遠されています。
FIP制度の種類
再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題と次世代電力ネットワークの在り方(出典:経済産業省)|(リンク先)

プレミアム固定型FIP

プレミアム固定型FITは、プレミアムが固定されます。
買取価格が市場価格の動きに連動するため、市場価格が上昇する電力需要の多い時間帯では、買取価格も上昇します。
一方で、市場価格が低下する電力需要の少ない時間帯には、買取価格も低下するため、再エネ事業者の収益が市場価格に大きく左右される方式です。

プレミアム固定型FIP(上限・下限付)

プレミアム固定型FIP(上限・下限付)は、プレミアムが固定されるものの、上限と下限が設定されます。
上限を超えた分のプレミアムはカットされてしまうため、市場価格が上昇する時間帯の発電コストを抑えることが可能です。
一方で下限も設定されているため、市場価格がどれほど低下しても、再エネ事業者に支払われる買取価格は下限より下回りません。

プレミアム変動型FIP

プレミアム変動型FIPは市場価格に応じて、プレミアムも変動する方式です。
変動型には買取価格を一定にしたり、市場価格に対する割合を一定にしたりなど、さまざまな方式があります。
買取価格を一定にする方式は、日本のFIT制度に似ています。
市場価格が低下する時間帯は、割高なプレミアムを支払わなければならない一方で、市場価格が上昇する時間帯は、市場価格以下での買取が可能になる場合があります。
買取価格が一定なため、事業者は収益を計算しやすいのが大きな特徴です。

日本が導入を検討しているFIP制度

日本におけるFIPは、「プレミアム固定型FIP」と「プレミアム変動型FIP」の中間の制度が検討されており、市場価格を参照してプレミアムを設定し、プレミアムの交付も1ヶ月ごとに行う方針で検討がすすめられています。
再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題と次世代電力ネットワークの在り方(出典:経済産業省)|(リンク先)

FIP制度による参照価格算定方法.png
FIP制度の詳細設計とアグリゲーションビジネスの更なる活性化④(出典:経済産業省)|(リンク先)

FIP制度のメリットとデメリット

FIP制度のメリットは、再生可能エネルギー発電事業者が電力需給に応じて変動する市場価格を意識し、市場価格が高いときに売電をすることにより収益が拡大できる点です。
デメリットは、再生可能エネルギー発電事業者の卸売市場での売電収入が、時間帯や季節による市場変動に加え、長期の気候変動や長期的な市場価格の下落などにより投資回収の予見性を著しく損なうリスクがある点です。

再生可能エネルギー発電事業者は、市場価格が安い季節に発電施設の定期メンテナンスをしたり蓄電池を活用するなどの工夫をし、市場価格の変動にあわせて売電を行うことで、収益を確保していくことが可能となります。

FIP制度でさらなる再エネ普及拡大へ

2021年1月13日に開催された、経済産業省の第23回「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」(第11回「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」との合同開催)において、FIT制度の後継となるFIP制度の制度設計が一通り完成しました。

徐々にFIP制度の対象となる電源の条件や、引き続きFIT制度が適用される電源などが整理されてきており、当面はFIT/FIP制度の双方を選べる規模の電源や引き続きFIT制度のみの支援となる領域、それぞれの入札対象範囲などが明らかになってきています。

令和3年度以降の調達価格等に関する意見(出典:経済産業省)|(リンク先)

FIP制度を利用して儲かる売電をするには

FIP制度の適用下で全量売電をする場合、効果的に収益を得るには、太陽光発電設備と蓄電池の併用が望ましいと考えられます。
産業用の太陽光発電設備では一般的に約150~200%の過積載を行いますが、パワーコンディショナーの総容量を総発電量が上回った場合、超過した電力はピークカットされて失われてしまいます。
ピークカットによる損失金額は年間売電収入の数%から十数%にも及ぶと試算されていますが、蓄電池と太陽光発電設備を併用することによって、パワーコンディショナーの総容量を超えて発電した分も無駄にならず、蓄電池に充電して蓄えておくことが可能になります。
また、発電量が減る夕方以降には蓄電池から放電して売電ができます。太陽光発電設備だけではロスになる分の発電量が蓄電池の活用によって収益化することが可能です。

FIP制度を利用して売電するポイント

■蓄電池の導入で太陽光発電した電気を夜間など卸電力市場単価の高い時間帯に売電する

■発電計画と実発電量が異なるとペナルティとなるため、正確な発電予測システムを導入する(インバランスリスクによるペナルティの削減)

■ESG、SDGs、脱炭素化の流れによって企業の非化石価値の需要が高まっているのに合わせて、小売り電気事業者やアグリゲータを通して非化石価値を欲している企業に高く売る

まとめ

再生可能エネルギーの更なる導入拡大、そして2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)実現に向けて、再エネの主力電源化に向けた動きはますます加速しています。変化し続ける電力関連制度を把握するとともに現状の電力利用を見直し、賢く活用してみてください。

 

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