自家消費型太陽光発電とは?導入メリット・注意点・補助金について解説
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自家消費型太陽光発電とは?
自家消費型太陽光発電とは、太陽光発電設備で発電した電力を電力会社に売るのではなく、自家消費(社内の電力として消費)する太陽光発電システムのことです。
発電した電気をすべて電力会社に売る「全量売電型」と異なり、自社でつくった電気を事業所・工場・倉庫・店舗などの自社で消費するため、その分電力会社から買う電気を減らすことができ、電気料金を削減できます。また、自家消費型太陽光発電はCO2を排出せず、クリーンエネルギーを使用するため、企業の環境対策としても有効です。
自家消費型太陽光発電が注目される理由
自家消費型太陽光発電が注目され、企業での導入事例が増えてきた背景には、「FIT制度における売電価格の下落」「電気代の値上がり」「再エネ賦課金の値上がり」があります。これにより、電気を大量に消費する企業を中心に売電よりも自家消費したほうが経費削減につながるという意識が浸透していきました。
また、2011年の東日本大震災を機に「BCP対策」への関心が高まり、自家消費型太陽光発電が注目されるようになり、2015年にはパリ協定で「地球温暖化対策の国際的な枠組みへの対策」が全世界で取り組むこととなり、脱炭素に向けた再エネ需要の高まりがますます加速していきました。
さらに2022年からは、ウクライナ情勢による原油価格の高騰により、さらに電気料金の値上がりが懸念されており、各国が再生可能エネルギー発電の開発を進める後押しにもなっています。
自家消費型太陽光発電システムの仕組み
工場・店舗・事業所などの屋根・駐車場など自社敷地内にソーラーパネルを設置し、太陽光によって作った電気を自社敷地内で消費する仕組みを「自家消費型太陽光発電」といいます。
自家消費型太陽光発電の基本的な仕組みは一般の太陽光発電と同じです。
太陽光発電は、光エネルギーを受けて太陽電池が発電した直流電力を、パワーコンディショナーにより電力会社と同じ交流電力に変換し、電力を施設内に供給します。
自家消費型太陽光発電では日中に発電した電力を施設内で使用しますが、曇りや雨の日で発電量が足りなかった場合や、夜間に電力消費が多い場合など、不足分については、電力会社から電気を購入したり、また蓄電池を導入している場合は、蓄えた電気を使用することもできます。
自家消費型太陽光発電の種類
自家消費型太陽光発電の導入には、太陽光発電設備の設置方法や電力の消費方法などによって、様々なケースがあります。ご希望のケースがお決まりでない場合は、企業の経営課題や予算、電力利用状況などをお伺いし、最適なご提案をいたします。
設置方法の違い:「自己所有型」と「第三者所有型PPAモデル」
設置方法には「自己所有型」と「第三者所有型PPAモデル」の2ケースがあります。
前者は自己資金で自社所有物として太陽光発電設備を導入することで、コスト削減効果を最大化することができます。後者は初期投資ゼロで設備のメンテナンスなどの手間もなくリスクを抱えずに太陽光発電を使用できます。
2017年4月1日より施行された改正FIT法以降、50kW未満の非FITの太陽光発電所を除き、すべての太陽光発電所においてメンテナンスが義務化されているため、「自己所有型」の場合は、定期メンテナンスを自社で行う必要があります。
電力消費方法の違い:「完全自家消費型」と「余剰売電型」
発電した電力の消費方法には「完全自家消費型」と「余剰売電型」の2ケースがあります。
前者は発電した電力を自社内ですべて消費し、後者は自社で消費しきれなかった電力を電力会社に買い取ってもらい売電収入を得ることができます。
余剰売電を適用する場合には条件があり、ソーラーパネルの設置容量が10~50kW未満、かつ太陽光発電の発電電力の「30%以上を自家消費に充当」する必要があります。買取価格は、FIT期間の20年間は国によって保障されますが、卒FIT以降は、電力会社と契約した売電価格へ移行しなければなりません。電力会社と契約する売電価格は大幅に下落する傾向のため、卒FITを迎える時には完全自家消費へシフトする動きが多く見られます。
自家消費型太陽光発電システム導入検討のポイント
【ポイント①】建物の状況
屋根に太陽光パネルを設置する場合、建物の築年数や耐荷重など、いくつかの条件を満たす必要があります。現地調査の結果、「建物の築年数が古い」「構造計算上、設置不可」「太陽光パネルを載せられる屋根面積が狭い」「屋根上に室外機やキュービクルなど設置している」など、様々な理由により、自家消費太陽光を屋根上に導入できないケースもあります。また、屋根形状や方角によって設置方法が異なるため、建物や屋根の状況を事前に確認しておく必要があります。
- 自社敷地内に太陽光パネルを設置する充分なスペースがある
- 建物が1981年に改正された建築基準法の新耐震基準を満たしている
- 建物が新耐震基準を満たしていない場合は耐震改修・耐震補強をしている
【ポイント②】電力使用状況
自家消費型太陽光は、発電した電力を余すことなく自社内で消費できるかが重要です。
電気使用量よりも発電量が多いと、電気を損失してしまうことになるため、年中無休・スーパーマーケット・冷凍冷蔵倉庫など消費電力が多く、電力を余すことなく消費できる場合に向いています。
特に日中の電気使用量が大きい施設や休業が少ないケースほど、自家消費型のメリットが大きくなります。 まずは、現在の電力使用状況を把握するところから始めましょう。 把握しておくことで、どれくらいのコスト削減ができるか、最大デマンドをどこまで下げられるか、削減効果が明確になり、どのような設計が最適なのかを判断する重要な材料になります。
- 現状どれほどの電気を使用しているのか
- 最も電気が使われている時間帯
- 年間を通しての電力使用状況
- 電気を使用する施設の稼働状況
【ポイント③】導入までのスケジュール
運転開始までの流れも一通り把握しておきましょう。
「現地調査」「シミュレーションやプランなどの提案・見積り」の後に、「事業計画」「接続契約」「補助金申請」「事業計画認定の取得」「工事請負契約」「PPA契約」などを経て、運転開始します。
導入までの流れは、依頼する業者や設置ケースなどによって異なりますが、事業計画から運転開始までにおおよそ4~13ヶ月程度かかります。電力会社の対策工事により13ヶ月以上要する場合もあるため、時期についてもご相談ください。
【ポイント④】補助金の申請
再生可能エネルギーを普及させるため、 再エネ導入には国からあらゆる税制優遇や補助金が提供されています。
第三者所有型PPAモデルは、導入費用はかかりませんが 、自己所有型の場合は、導入費用をいかに削減するかも重要です。補助金を利用してうまく導入できれば、経済的なメリットはさらに大きくなるため、最新の補助金情報を確認するようにしましょう。
また、中小企業経営強化税制(設備投資減税)による太陽光発電の優遇措置があります。
自家消費型太陽光発電を導入した初年度の「節税」に繋げることができるため、多くの企業で活用されています。
その他、47都道府県の各自治体が独自で実施する太陽光発電の助成金もあるので、お住まいの自治体の助成金を調べてみましょう。
- 太陽光発電導入で活用できる最新の補助金
- お住まいの自治体の助成金
- 中小企業経営強化税制(設備投資減税)による優遇措置
自家消費型太陽光発電を導入するメリット
【メリット①】電気料金を削減できる
発電した電気を自家消費するため、電力会社から買う電気が少なくなり、電気料金の削減につながります。また、蓄電システムを導入すれば電気を貯めておけるので、最も多くの電力を使用する時間帯に、貯めておいた電力を充当することでピークカットが可能です。
また、電気使用量に比例して電力会社に支払わなければならない再エネ賦課金の削減にもつながります。年々上がり続けていく電気料金と再エネ賦課金は、電気使用量の多い企業には、大きく影響を受けます。
自家消費した電力には「環境価値」を創出することができ、環境価値は取引することができます。
【メリット②】CO2排出量の削減になる
自家消費型太陽光発電の導入によってCO2排出量を削減するという環境価値を生み出します。この取り組みを企業としてのCSR活動として対外的に伝えることで、企業評価の向上につながります。
また、パリ協定をきっかけに、企業が気候変動に対応した経営戦略の開示(TCFD)や脱炭素に向けた目標設定(SBT、RE100)などを通じ、脱炭素経営に取り組む動きが加速しており、CO2削減の取り組みは、国際的なESG投資の潮流の中で、企業価値の向上につながることが期待できます。
【メリット③】災害時の非常用電源としてのBCP対策になる
近年の自然災害による企業への影響が大規模かつ多様化したことに伴い、災害時の電源確保が事業継続に与える影響と重要性が高まっています。
非常時の電力調達方法として「太陽光発電設備」と「蓄電池」を導入することで、BCP対策だけでなく、平時であっても自家消費により電気代削減ができるといったメリットがあります。
【メリット④】中小企業の節税対策
太陽光発電設備は、法定耐用年数の17年間にわたって、減価償却資産として費用計上することができるため、長期的な法人税の節税につながります。 また、設備の導入費用や、運用に伴う点検や修理などのメンテナンス費用も経費として計上できます。
その上、自家消費型太陽光発電であれば、中小企業経営強化税制(設備投資減税)による太陽光発電の優遇措置があり、太陽光発電設備の取得価額の7%の税額控除を受けられる場合があります。
自家消費型太陽光発電の注意点
【注意点①】設置スペースの確保が必要
太陽光発電設備を導入するには、太陽光パネル以外にも設置するスペースが必要です。
太陽光パネルで発電した電気を直流から交流へと変える役割を持つ「パワーコンディショナー」、夜間や非常時などにも使うための「蓄電池」、高い電圧を施設で使える電圧に変換する「キュービクル」など関連設備を含めたスペースが確保できるか確認しておく費用があります。
【注意点②】消費電力量に合わせた設計
設置可能な面積が広いからといって必要以上の太陽光パネルを設置しないようにしましょう。自家消費を目的とする場合は、電力需要に合わせた発電容量で設計されているか確認する必要があります。
自家消費型太陽光発電の場合、余剰電力は逆潮流させることができません。需要(消費電力)を発電が上回ることがないような設計が必要です。
【注意点③】メンテナンス費用がかかる
太陽光発電システムは、時間経過とともに劣化し、それに伴い発電量も低下していきます。
経年劣化以外にも、天候や災害による故障、メンテナンス不足、設置環境など様々な要因によって、突発的な発電停止・発電量の低下・機器の故障が起こるリスクを伴います。
定期的な点検と適切なメンテナンスを行うことで、安全のもと、長期間安定して高稼働率を維持することができ、早期の異常発見・対応が可能となります。
その他、数十年後に太陽光発電設備を廃棄する廃棄費用の積み立ても計画しておくとよいでしょう。
【注意点④】天候で発電量が左右される
太陽光発電といった自然エネルギーを利用した発電方法では、発電量が天候に左右されてしまいます。
気象庁のホームページには、過去の日照率が掲載されています。お住まいの地域の日照率がどれくらいか調べておくことで、ある程度、年間を通じての発電量を計算することができます。これまでの統計をもとにどれくらい発電できるか事前に把握しておくとよいでしょう。
また、太陽光発電では夜間の発電は行えませんが、昼間に発電した電力を蓄電池に貯めて夜に使用すれば、自家消費率を大幅にアップできます。自家消費率を上げたい方は、蓄電池の導入を併せて検討するとよいでしょう。蓄電池は発電設備の発電能力に適した容量を選ぶ必要があります。大きすぎれば能力を生かしきれず、導入費用が大きくなり、小さければ発電した電力を有効活用できません。
太陽光発電は、太陽光パネルに当たる直射日光の量に比例して発電効率が上がるため、太陽光パネルを設置する方角・角度も大切なポイントです。どんなに高性能の太陽光電池パネルを設置したとしても、最適な方法で設置されていなえれば、思うような発電量を得られません。太陽光発電を導入する際には、その点をきちんと把握した上で設置する屋根に最適な方法を選択することが重要です。
まとめ
自社に最適な自家消費型太陽光発電を選ぶ際には、まずは自家消費型太陽光発電を導入する目的を明確にし、現在の電力使用状況を把握するところから始めましょう。
その後、設置条件や経営課題に合わせて最適な太陽光発電設備を選択していく必要があります。
- 自社敷地内か自社敷地外のどこに太陽光パネルを設置するか
- 初期費用を自社で負担するか
- 保守点検は誰が行うか
- 電気料金や再エネ賦課金の削減を目的とするか
- RE100達成を目指すのか
- BCP対策に非常用電源確保の必要性があるか
- 設置環境の向き不向き(豪雪地帯・塩害地域・日照時間・土砂災害etc)
お客様ご自身での検討が難しい場合や、ご希望のケースがお決まりでない場合は、お客様のご要望や条件、企業の経営課題や予算、電力利用状況などをお伺いし、最適なご提案をいたします。
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