【徹底解説】太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度とは?売電収益への影響は?
Contents
2022年7月1日からスタート
太陽光発電の廃棄等費用積立制度とは
2022年7月1日から、太陽光発電の廃棄費用積立制度が始まります。
これにより、太陽光発電事業者に対して廃棄費用の外部積立が原則として義務化されることになります。
太陽光発電は、2012年に開始した固定買取価格制度(FIT制度)により急速に普及拡大しました。太陽光発電の本格的な導入から10数年経ち、太陽光発電設備の適切な処分には費用がかかるため、卒FITを迎えた後に放置・不法投棄されるのではないかといった懸念や、太陽光パネルには鉛やセレンなどの有害物質を含むケースがあることから、2018年に資源エネルギー庁は、適正な廃棄に向けて「廃棄費用の積み立てと廃棄費用に関する報告」を義務化しました。
しかしながら、その後、廃棄の費用を捻出できない、あるいは準備しなかったなどの場合、他の土地に不法投棄されるのではないかという懸念や、積み立てていない事業者が多いことが課題として持ち上がったため、適正な廃棄に向けて廃棄費用の積立が義務化されることになりました。
そして、2022年7月からは、毎月の買取費用から積立金相当額が差し引かれ、買取義務者を経由して推進機関に積み立てられることになります。
FIT期間終了後に太陽光発電設備を解体・撤去する場合、「発電設備の廃棄」を申請することで、電力広域的運営推進機関から積立金を全額払い戻すことができます。
FIT期間終了後も発電事業を継続する場合は、撤去するタイミングまで廃棄費用積立金は、電力広域的運営推進機関に預けることになります。
太陽光パネル廃棄に関する経緯
2017年4月 | 改正FIT法 事業計画認定申請時に廃棄費用の積み立て計画を立てて申請することが義務化 |
---|---|
2018年7月31日 | 廃棄費用に関する報告が義務化 定期報告(運転費用報告)の項目に廃棄費用に関する項目が追加 |
2020年2月25日 | 法律改正の閣議決定 太陽光発電の廃棄費用の外部積立(源泉徴収)を義務化することを決定 |
2020年6月5日 | エネルギー供給強靱化法の成立 事業用太陽光発電事業者に対して廃棄費用の外部積立が原則義務化 |
2022年7月1日 | 太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度の開始 |
太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度概要
対 象 | 10kW以上の太陽光発電設備を有するすべて事業者 (全量売電・余剰売電どちらも対象) |
---|---|
方 式 | 原則、源泉徴収的な外部積立て(売電収益から源泉徴収) |
金 額 | 基準価格×売電電力量 |
時 期 | 売電期間(調達期間)または交付期間の終了前10年間 (残りの売電期間が10年に満たない場合は、2022年7月1日から買取満了日まで) |
積立金額
毎月の積立費用の基準額は、「認定時期」と「月ごとの売電量」に応じて決まり、売電収入から差し引かれます。
出典:資源エネルギー庁「廃棄等費用積立ガイドライン」
<例:2012年度×50kW(年間発電量50,000kWh)の低圧設備事業者の場合>
・年間積立額:50,000kWh × 1.62円/kWh = 81,000円/年
・積立総額:129,600円/年 × 10年間 = 810,000円
<例:2016年度×50kW(年間発電量50,000kWh)の低圧設備事業者の場合>
・年間積立額:50,000kWh × 1.09円/kWh = 54,500円/年
・積立総額:87,200円/年 × 10年間 = 545,000円
条件が同じ発電所であったとしても2012年と2016年では265,000円と大きな差があります。
積立金の取戻し条件
積立金はどのような場合に、いくら取戻せるのでしょうか?
「廃棄等費用積立ガイドライン」には下記のとおり記載されています。
出典:経済産業省「太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について」
内部積立の条件
売電収入から源泉徴収的に引かれる「外部積立」ではなく、自主的に積み立てる「内部積立」をすることはできないのでしょうか。
長期安定発電の責任・能力があり、かつ確実な資金確保が見込まれるものとして、一定の厳格な要件を満たす場合には、例外的に、発電事業者が自ら廃棄等に必要な資金を貯蓄する「内部積立」が認められる。その場合には下記6つの条件を満たす必要があります。
① 50kW以上(高圧)の発電所であること
② 発電事業者が電気事業法上の発電事業者であること
または1MW以上で発電量の50%以上売電していること
③ 外部積立の場合と同額以上の積み立てを予定し、公表に同意すること
④ 毎年の運転費用報告時点で、外部積立の場合と同額以上積立てて、公表に同意すること
⑤ 金融機関によって廃棄費用の積み立てが可能なことが定期的に確認されていること
または会計士によって監査された所定の財務諸表が開示されていること
⑥ ①~⑤の条件が満たせなくなったら、即座に外部積立に移ること
廃棄費用積立のよくある質問
- FIPの場合は対象?
- 対象です。
10kW以上の太陽光発電設備の場合は外部積立の対象で源泉徴収されます。 - 余剰売電の場合は対象?
- 対象です。
全量売電・余剰売電を問わず、10kW以上の太陽光発電設備の場合は外部積立の対象で源泉徴収されます。 - 自家消費型の場合は?
- 10kW未満とFIT制度を利用していない案件については対象外です。
ご自身で内部積立を行う必要があります。 - 買取期間後も発電事業を継続する場合、積立金は?
- 買取期間終了後も発電事業を継続する場合は、撤去するタイミングまで廃棄費用積立金は、電力広域的運営推進機関に預けることになります。ただし、交換または廃棄するパネルが一定量ある場合に限り、積立金の取り戻しが認められます。
- 発電事業を譲渡した場合、積立金は?
- 積立金は承継されるため、他社に譲渡した場合は積立金も譲渡されます。
- 廃棄費用が積立金額より安かったら?
- 積立全は全額が取戻しされます。
- 廃棄費用が積立金額より高かったら?
- 不足分は発電事業者が負担する必要があります。
まとめ
廃棄費用について
2022年7月以降、10kWの太陽光発電設備は、売電期間の後半10年間、売電収入から天引きで廃棄費用を積み立てることになります。
売電期間後半10年間の売電収入は、源泉徴収される分を見込んで運用を考えていく必要があります。
撤去に必要な金額は設置場所などによりケースバイケースで、売電期間終了時にどれくらいの廃棄費用が必要になるのかはまだ分かりません。
また、太陽光発電設備を撤去する際、廃棄費用積立金が不足する場合は発電事業者が不足分を負担します。そういったことから、積立金とは別にある程度の廃棄費用を用意しておくことが賢明かもしれません。
昨今では、技術の進歩や政府の計らいにより、リサイクルが難しかった太陽光パネルについても、徐々に使用済太陽光パネルのリユース・リサイクルについて対応できるところが増えてきました。廃棄するのではなく再利用することで、資源を有効活用しつつ、廃棄費用を軽減できる仕組みが今後確立されていくのではないでしょうか。
売電収入について
売電収入を増やす有効な方法として、パワーコンディショナーのリパワリングがあります。
発電量のカギを握るパワーコンディショナー。
FIT当初のパワーコンディショナーは、現在のものと比べて、変換効率が低いため、新型に交換することで低下した発電量の向上が望める可能性があります。
現在ご使用のパワーコンディショナーの保証期間を待つ必要はありません。
早い段階のうちにパワーコンディショナーをリパワリングすることで、FIT期間終了まで発電量が向上し、より高いシステム収益を得ることができるでしょう。できるだけ早期交換することがリパワリングのコツです。
発電設備本来の性能を最大限に発揮するためにリパワリングについても検討されてみてはいかがでしょうか。運用について何かお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にご相談ください。
廃棄費用積立制度に関しては、2021年9月に資源エネルギー庁がガイドラインを公表しております。こちらもご覧ください。
参考:資源エネルギー庁「廃棄等費用積立ガイドライン」(2021 年9月公表)
導入メリットや導入前の失敗事例と注意点、経費削減、他社比較の重点ポイントなど詳しく解説
ご不明な点や経営課題などお気軽にお問い合わせください。お見積り概算・ご相談は無料です。
関連記事