太陽光発電の台風リスクを解説|被害・対策・補償について
(最終更新日:2022/06/06)
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太陽光発電の台風被害
地球温暖化に伴う気候変化により、世界中で大規模な山火事や洪水などの自然災害が頻発し、その被害は年々深刻さを増しています。
日本でもその発生率は高くなり、数十年に一度だった異常気象が季節を問わず年中発生し、恒例化しつつあります。
強風によって太陽光パネルが飛散したり、風圧や飛来物の衝突によって太陽光パネルのガラス部分にひび割れ・傷が付くなど、例年、暴風や豪雨をともなう台風が、太陽光発電設備に甚大な被害をもたらしていることをご存知でしょうか。
このような災害リスクの高まりから、自然災害により損壊した太陽光パネルやパワーコンディショナー、架台、配線、分電盤等の機器の適正処理への備えの重要性が求められています。
9月。本格的な台風シーズンに突入し、太陽光パネルの台風被害について懸念される方も多いのではないでしょうか。
「台風による太陽光発電への影響は?」
「太陽光パネルが強風で飛ばされないか?」
「太陽光パネルの耐風性はどうなのか?」
「太陽光パネルが台風で被害を受けたらどうすればいい?」
「冠水時の電気系統への影響は?」など・・・
この記事では、太陽光発電設備が台風で被害に遭うことはないのかを懸念している方に向けて、太陽光発電システムの台風による被害の実態、故障するケースやその原因と対策について解説します。
自然災害による太陽光発電システムの被害
事業⽤太陽光発電について、高圧太陽光発電設備(50kW以上)はもちろん、2021年度から低圧太陽光発電設備(10〜50kW未満)も電気事業法上の事故報告義務が課されるようになりました。
経済産業省の事故報告資料によると、強風によるパネルやパワコンの損傷、豪雨での土砂崩れによるパネル損傷といった被害が多発しています。
引用:経済産業省「今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について」(H30.11.26)
台風による太陽光パネル・設備の故障ケース
強風により太陽光パネルが飛散・脱落
台風による故障で多いケースには、まず太陽光パネルや発電設備の飛散が挙げられます。
太陽光パネルの耐風圧は「JIS C 8990」で定められており、耐風圧荷重は2,400Pa、風速に換算すると風速62メートルに耐えうる設計となっています。直近50年間のうち風速60メートルを超えたことはありません。暴風にも耐えられるように充分に対策がとられていますが、近年の大型台風の破壊力は、想定外の規模になることも度々あるため、施工が基準を満たしているか、保険や保証の範囲なのか、事前に確認しておくことが必要です。今後は設備全体が飛ばされる被害まで想定して保険の加入や周辺環境の整備を行うことが大切です。また、太陽光パネルや発電設備が飛ばされて人に直撃した場合の補償に関しては、自然災害補償の適用外となるため別の保険へ加入しておく必要があります。
風圧や飛来物の衝突による太陽光パネルの破損
強風にともなう風圧、砂利の飛散といった要因により、太陽光パネルのガラスが破損することがあります。構内外の砂利が強風によって巻き上げられ、パネルのガラス面に衝突することで起こります。
砂利⾶散の対策には、通路のアスファルト舗装や粉塵⾶散防⽌剤の散布が有効でしょう。
架台の損傷
太陽光パネルに強風が直撃し続けた場合、パネルを支える架台がその風圧に耐えきれずに折れてしまったり、歪んだりすることがあります。また、飛来物がパネル部分や架台部分にぶつかり、その衝撃で損傷することも考えられるでしょう。これを防ぐためには、強度を担保する施工ができる設置業者を選ぶことが重要です。その上で、提案された設計図面を基に耐久性や柱が適正な間隔で配置されているかなどについて、施工業者に確認するとよいでしょう。
太陽光発電システムの浸水・水没
台風では、豪雨や河川の氾濫により、冠水被害が発生することもあります。
地面から低い位置に発電設備がある野立て太陽光発電の場合、台風被害として最も懸念しなければならないのが浸水、水没の危険性です。
太陽光パネル自体は雨に打たれても問題ない仕様ですが、パワーコンディショナーなどの機器が水没すると接触不良やショートを起こし、出火や感電の原因となります。
建物の屋根に太陽光パネルがある場合でも、パワーコンディショナーなど機器の位置には留意する必要があります。
太陽光発電を導入する際には、ハザードマップを確認するなど設置エリアの事前調査を行うことがとても重要です。
できる直前対策は?台風シーズン前までに点検を実施!
お住いの地域に台風や豪雨がやってきそうであれば、まずは、天気予報やニュースなどで事前に情報を仕入れましょう。太陽光発電設備を守るために、下記に挙げた直前対策も忘れず行いましょう。
設計・施行の確認
太陽光発電の設計が強風に耐えられるよう設計されているか、またその通りに施工されているかどうかをチェックしましょう。太陽光パネルは、耐風圧や取り付け強度などについてJIS規格によって厳格に定められています。
太陽光パネルの耐風圧は、「JIS C 8990」で定められており、耐風圧荷重は2,400Paに耐えうる設計(風速62メートル/秒)となっています。 また、太陽光パネル取り付け強度は、「JIS C 8955」という規格で基準が定められています。
もし気になることがあれば、施工業者に確認・相談してみましょう。
しかし、勢いを緩めることなく本土に上陸するケースも見られる近年の台風の勢力は以前より増している現状です。よく耳にするようになった「想定外」の被害が出る可能性は考えておくべきかもしれません。
メーカー保証・保険の確認
メーカー保証は、基本的には製品に問題があった場合や、メーカーが想定する通常使用の範囲内で不具合があった場合に、修理や交換が保証されるものです。そのため、メーカー保証では自然災害の対象外であることが多いのですが、メーカーによっては台風・豪雨被害も補償対象になっている場合もあるため、保証内容を確認しておきましょう。
動産総合保険、賠償責任保険等に加入されている場合は、その保険のカバー範囲を確認し、不安な要素があれば保険の加入や見直しも検討しましょう。
企業総合保険 | 火災・落雷・風災・水災などの様々な偶然な事故により、太陽光発電設備が損害を受けた時のための補償 |
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施設賠償責任保険 | 所有している太陽光発電が他人や他人の物に損害を与えた時のための補償 |
動産総合保険 | 自然災害などの損害を受けた時のための補償 |
休業損害補償保険 (売電収入補償特約) |
発電が停止したことにより失われた売電収入を補填する補償 |
定期的な点検・事後の点検
きちんと施工された設備でも、固定部分の緩みや歪みは生じます。それを放置しておくと、台風の風に耐えられないことも想定されます。 定期的な点検・メンテナンスは太陽光発電設備にとって非常に重要です。台風シーズン前後に点検できるようなスケジュールを組んでおくとより良い対策となるでしょう。
点検のポイント
前述したとおり、異常気象が季節を問わず年中発生し、恒例化しつつあります。
特に台風シーズンに入る前には、太陽電池パネルの飛散等による被害防止のための万全な対策が必要となることから、経済産業省では点検のチェックポイントを挙げています。これらを参考に事前の対策を実施しましょう。
- 太陽電池発電設備が電気設備の技術基準に適合していることを確認すること。
- 太陽電池発電設備の架台・基礎などが必要な強度を有している事を確認し、また構造、強度に影響する接合部にゆるみや錆、破損がないことを確認すること。
- 太陽電池パネルの架台への接合部にゆるみや錆、破損がないことを確認すること。
- 電力ケーブルやケーブルラック取付部に、ゆるみや破損がないことを確認すること。
- 柵やへい、遠隔監視装置などが、健全な状態に維持されていることを確認すること。
- 太陽電池発電設備の点検後、対策の要否を判断し、必要に応じて、基礎のコンクリートの増し打ち、基礎・架台・太陽電池パネルの接合部補強などの飛散被害を防止する対策を行うこと。
台風で太陽光パネル飛ばされた場合の対処法
想定外の被害は起こり得るものです。
万一、台風による強風で太陽光パネルが飛ばされてしまった場合、どのように対処すべきなのでしょうか。誤った対処による二次被害が出ないよう注意が必要です。
被害状況を確認する
台風が過ぎ去ったら、被害状況を確認します。まずは、発電量モニターで稼働状況を確認し、その後、目視で太陽光パネルに損傷がないか確認します。そして、異常が疑われる場合には、業者に連絡をとり、点検依頼します。
故障している場合でも発電している可能性があるため、不用意に素手で触ると、漏電した状態の太陽光発電設備から感電してしまう危険性があります。不必要に近づかないように注意しましょう。
台風によって故障した発電設備を確認して可能であれば電源を切る
太陽光パネルや架台の損傷以外にも配線ケーブルが断線している可能性があります。
断線は、漏電による出火や感電などの二次被害の危険性が増すため、特に注意して対応しましょう。台風によって故障した発電設備を確認し、感電や怪我がないよう安全を確保した上で、可能であれば電源を切ります。
ブレーカー、キュービクル、パワコン、集電箱、接続箱など、発電設備のうち、どの電源を停止するか確認が必要です。
飛ばされた太陽光パネルを回収する
台風に飛ばされて壊れた太陽光パネルや設備を自力で復旧させるのは、危険が伴いますのでやめましょう。また、廃棄処分についても、太陽光パネルの部材を適切な方法で処理する必要性からも、廃棄業者に回収してもらいます。
故障した太陽光パネルや設備は、自力で復旧させることはできません。
また、故障等によって太陽光パネルの廃棄処理が必要な場合、適切な方法で処理する必要性があるため、廃棄業者に回収してもらう必要があります。
まとめ
災害大国と呼ばれる日本において、太陽光発電の台風被害への備えは必要不可欠です。
時に台風は太陽光発電設備を大きく損壊させ、事業継続を困難にするほどの被害をもたらします。
太陽光発電設備を導入する際には、災害に耐えうる基準に準拠した適切な設計・施工を行う設置業者の選択が重要となってきます。
運用開始後については、自然災害による被害は予測が難しいですが「事前に地盤を確認する」「ハザードマップで自然災害が起こる可能性を調べておく」など対策を講じておきましょう。
また、「メンテナンスの体制・回数を見直し」や「被害に遭ったときの対処法や保険への加入」など、多角的に対策することが重要です。
ただし、どれだけ対策を講じても想定以上の台風が上陸し、太陽光発電設備の一部が損壊する可能性はあります。その場合には、感電・怪我を誘発するような行動を避け、速やかに専門業者へ連絡するよう心がけましょう。
ユニバーサルエコロジーでは、太陽光発電システムについて5,000件以上の施工実績があり、「設計・調達・工事」のすべてを自社で一貫して行っています。その過程で得たデータを基にした精度の高いシミュレーションの実施と、社内の厳しい設計・施工基準を遵守する体制で、再度構造設計を行い、最適なシステムで価値ある価格での電力供給をいたします。
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